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「ちょうちょ」セルフライナーノーツ

『ちょうちょ』
忙しい街の中で、「あ!ちょうちょ!」って思えるなんて、とても素敵なことです。
僕らが忘れかけていた大切なものを、そっと教えてくれるような『ちょうちょ』。
あんなにヘンテコな幼虫だったのに、やがてサナギになって、キレイな羽が生えて、
こんなにキレイに飛ぶんだもの。ほら、誰だってキレイに飛べるんだよ!って。
蝶のように舞い、蜂蜜のように甘い1枚になりました。ぜひ聴いて下さい。
『ちょうちょ』がたくさんの人達に見つかればいいなあという願いを込めて。
早瀬直久(ベベチオ)
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1. お花畑
目の前に広がるお花畑。夢のような現実に誰しもホホが緩みます。そこには優しい神秘が満ちていて、きっと僕らを包んでくれるはず。例えばカップ ルが喧嘩していても、ヤンキーが叫んでいても、そこがお花畑ならファンタスティックな1ページになるでしょう。枯れてしまった心には、花咲か兄さんが種を まいてあげるから、さあさあどうぞ「ちょうちょ」になって舞って下さい。音も花粉も瞳もキラキラ。飛びます飛びます!
 
2.モーニング
昼夜大逆転の生活を送っていると、一日のはじまりがいつなのか判らなくなりました。それが朝だと気付いていながらも、夕焼けに「Good morning」と告げるなんて滑稽だ。何周か回ってやっと朝を唄うことが出来ました。朝は夢の続きなんだから、しっかり目を覚まさなきゃ。起きても夢は見れるんです。ベベチオライブでお馴染みのメンバーが楽しい音を奏でてくれました。
 
3.butterfly
何年か前から弾き語っていた曲なのですが、やっと本作でお目見え。「butterfly」を訳すと「ちょうちょ」であるというのになかなか結び 付かなかったわたくし。このたび嬉し恥ずかし結ばれました。空を上手に泳げない様子をかなり上手く表現出来たのではないかと満足してます。乗り遅れてし まったジタバタ感を伝えると清水一登さんがバスクラリネットで最高な塩梅で演奏してくれました。
 
4.風のいたずら
ベベチオには珍しく新しいテンポの爽快リズムソング。気まぐれな風に乗って、良いことも良くないことも過ぎて行く。時間や記憶は風が流してくれるんだ。軽快なサウンドの中に切なさを見つけて感じてもらえたら嬉しいです。井上信平さんの素敵なフルート、中森泰弘さんのかっちょいいストラトが曲のイメージを鮮明にしてくれました。最後は絡み合って消えて行くんです。
 
5.恋の中
JR東日本『エキナカ』のCMソング。構想の絵コンテを見せてもらってすぐに、素敵なストーリーを汲み取りました。遠くで線路が細くなって消え そうでも、ずっとずっとずっと繋がってる。いつまでもそう想う二人は恋の中。とってもシンプルな曲なのですが、奥行きのあるメロウな世界観に仕上がりまし た。黒っぽいブレイキーな切なさが効いてます。無声映画のような時間経過も大変気に入ってます。
 
6.F
ニコンのFシリーズのカメラを持っていて写真をやるんですが、白内障のせいか、ファインダー越しに見る世界がテレビ画面みたいに見えて迷子に思 うことがあったんです。ん?意味分かんないって?ちなみにこの曲のコード、なんと「F」から転調し始めて「F」で終わるんですよ。ん?意味ないって?そん な意味がないからこそ意味が生まれる日々の反復を面白コーラスで彩ってみました。オール宅録。
 
7.想い描いて
REENAL by Resona BankのラジオCMソングとして書き下ろしたヒューマンエコロジーな曲。言葉とメロディの関係がとても優しく合致していて、曲の持つイメージをそのまま に表現できました。都会的な旋律を奏でるパトリック・ヌジェさんのフリューゲルホーンが最高に気持ち好い。「すべてはつまり愛なんだよ」って悠々と唄え て、大切な曲の出来上がり。マキシシングルからのリマスタリング。
 
8.かわいそうな花
この曲には絵コンテもあって、ずいぶん前から完成されたイメージで弾き語っていました。やっとの思いで会えた二人がうまく言葉を交わせずに、手 に持った花が折れていることを嘆き合うという少し伝わり難い設定のお話(イメージ)です。とにかく切ない疾走感を出したかった。涙で滲んで見えるような幻 想的な視界で包みたかった。深いところまで潜って欲しいです。清水さんの驚異のシンセサイザーさばきも必聴です。
 
9.アイボリー
僕が故郷を思うときの色、アイボリー。だんだん音楽活動が忙しくなってきて、僕はアイボリーに染まりました。情景がふわーと広がる素敵な曲にな りました。中島ノブユキさんによる緩やかで美しいピアノ。この曲はタイム感が大事なので、僕が歌い、それをヘッドフォンで聴いてもらいながらピアノを録り ました。ホーンアレンジも熟考した甲斐あって、満足の出来栄え。とても思い入れのある一曲です。
 
10.別れのスプーン
僕は子供の頃、夏休みが終わりを告げる度に従兄弟に手を振って泣いていました。大人になれば消えてしまいそうなそんな気持ちは、波がさらう足跡 のように淡いものです。『元気でね』というあくまでポジティブな別れはいつも人を清らかにしてくれる。ガットギターとチェロとヴィオラというシンプルかつ 渋い楽器構成で、老若男女がきっと心動かしてくれるだろう曲になりました。
 
11.幸福のスイッチ
映画『幸福のスイッチ』の主題歌であり、ベベチオにとって多くの人に頷いて欲しい曲。物語の幕を下ろしてくれるのと同時に、また新たな始まりを予感させてくれる曲でもあるので、アルバム「ちょうちょ」のラストナンバーにしました。アコースティックなサウンドに漂う田村玄一さんの浮遊感たっぷりのペダルスティールがとっても心地好い。大音量で是非マキシシングルからのリマスタリング。